肛門外科

肛門には実に多種多様な疾患が起こります。痔核、痔瘻、裂肛という3大肛門疾患は勿論のこと、腫瘍、炎症、性病などいわば目に見える疾患に加え、神経痛、失禁、排便機能の異常など外見は異常がない病気も数多く存在します。例えば様々な排便機能障害とりわけ、「便秘」です。あるいは便意はあるのに出口で便が出づらい、なかなかすっきりしない、おしりのあたりが痛くて排便も辛い、便をしてもまたすぐにしたくなるというような症状です。が、このような排便機能障害は日本では医師にすらまだまだ十分認知されておらず、様々な排便障害の症状を医師に訴えても「便秘」として片付けられてしまい、納得できる説明もないまま下剤だけ処方され片付けられてしまうケースは残念ながら決して少なくありません。このような「機能的疾患」は昨今、非常に増えており非常に辛い思いをされている患者さんが少なからずみえるのは嘆かわしいことです。当院では、比較的簡単な検査でその方の排便障害を診断し、できるだけその方の病態に即した治療を行うよう心がけています。

診断・治療

当院で行っている大腸肛門検査

おしりから軟らかいスコープを大腸の奥に向かって挿入します。基本的には鎮静剤なども使用しながら、できるだけリラックスした状態で楽に検査を受けていただけるようにしています。少数の挿入困難例は別として、基本的には無痛検査を旨としています。観察するだけならばまず15分もあれば挿入から抜去まで終わってしまいます。検査では、大腸の中に便の通過を妨げるようなできものがないかを確認するのは勿論、その他にも憩室(けいしつ)の存在や大腸の長さや緩み具合など排便障害の原因要素がある程度把握できます。ポリープなど内視鏡的に処置可能な病変であれば、その場で治療まで済ませてしまうことも可能です。小さなものであれば日帰りもできますが、複数病変や大きなポリープの場合は大抵1、2泊ですが入院を要することもあります。なお、当院では空気でなく炭酸ガスを使用していますので、検査後のお腹の張りや気持ち悪さが通常の空気送気に比べて著しく軽減されます。
おしりからバリウムと空気を注入してレントゲン写真を撮ります。得られる情報は内視鏡と近似しているところもありますが、その方の大腸全体の形状を外側から見れるのが有利な点です。

実際の診察の流れ

まずは受診された患者さんからよくお話をうかがいます。
お腹に症状があるのならばまずお腹を診させていただきます。お腹の張り具合は勿論、触診することでその方の体格や体質がある程度把握できます。お尻に症状があるのならばお尻も拝見しないわけにはいきません。「羞恥心」には十分配慮させていただき、二重に遮蔽された空間で行います。患者さんには苦痛を与えないよう局所麻酔ゼリーなども用いながら、やさしく丁寧に直腸内指診や肛門鏡診を行うよう心がけています。
診察台上で拝見しました後、必要とあればそのまま隣接した洋式トイレに移動していただきます。これは、内痔核や直腸脱などいきんだ状態でこそ初めて現れる肛門特有の病理機序を有する疾患を「再現」するためです。この際には骨盤底全体の観察ができますので、肛門だけでなく合併する婦人科系疾患(子宮脱や膣脱など)の発見も可能です。
以上の診察が終了しましたら今一度問診時の席についていただき、考えられる診断とそれに対する治療の方針をご説明いたします。ただし、疾病の種類によっては、何らかの加療を行いつつその後に外来に通っていただきながら診断や治療を「煮詰めて」ゆきます。

直腸肛門科特別コンテンツ

便通とお尻でお悩みの方へ

"出す"のは食べるのと同様に大切な生理行為です。
貴方は人知れずこんな症状にお悩みではありませんか?
  • 便秘がひどい
  • 便通があってもすっきりしない
  • なかなか便が降りてこない
  • 一度排便してもすぐにまた便意がある
  • 1回の排便で出切らない
  • 下痢と便秘が交替する
  • いつも下痢ぽい
  • 排便が気になって出かけられない
  • 排便時に出血する
  • 排便時に痛む
  • 排便に関係なく痛む
  • 排便時に何かが出てくる
  • 出てきたものを指で押し戻している
  • 分泌粘液が出てくる
  • いつも何か出っ張りがある
  • 痒くてしょうがない
  • 便が出口でつかえる
  • 便が漏れてしまう
肛門には実に多種多様な疾患が起こります。
痔核、痔瘻、裂肛という3大肛門疾患は勿論のこと、腫瘍、炎症、性病などいわば目に見える疾患に加え、神経痛、失禁、排便機能の異常など外見は異常がない病気も数多く存在します。

例えば様々な排便機能障害とりわけ、「便秘」です。あるいは便意はあるのに出口で便が出づらい、なかなかすっきりしない、おしりのあたりが痛くて排便も辛い、便をしてもまたすぐにしたくなるというような症状です。が、このような排便機能障害は日本では医師にすらまだまだ十分認知されておらず、様々な排便障害の症状を医師に訴えても「便秘」として片付けられてしまい、納得できる説明もないまま下剤だけ処方され片付けられてしまうケースは残念ながら決して少なくありません。このような「機能的疾患」は昨今、非常に増えており非常に辛い思いをされている患者さんが少なからずみえるのは嘆かわしいことです。

当院では、比較的簡単な検査でその方の排便障害を診断し、できるだけその方の病態に即した治療を行うよう心がけています。
よく「おしりは手術をしてもまた悪くなる」と言われますが、これは適切な手術の後に末永く正しい排便管理を行わないためにそうなっていることが多く、正しい診断の下に正しい治療が行われかつ根気よく日々の排便を管理し続ければ、たいていの場合おしりは健やかに保てるものと思います。

肛門疾患各論

肛門に関する疾患には主に以下の疾患があります。

  • 内痔核
  • 裂肛
  • 痔瘻
  • 血栓性外痔核
  • 直腸脱
  • 直腸瘤

三枝クリニックのホームページを参照

便秘の悩みは深い

ここでは排便障害の中でも最も頻度が高い常習性便秘について特に述べてみたいと思います。
便秘で悩んでおられる方は非常に多いのですが、その大半の方は便秘に対する正しい知識をお持ちでありません。
女性は一概に男性よりも大腸が長く、それに加え黄体ホルモンの働きや慢性的な水分摂取の不足、さらには運動不足や夜勤など不規則な生活により腸管の蠕動運動が低下したり、逆に痙攣を起こすなどするため便秘に陥りやすくなります。また男性でも社会生活における心身のストレスから消化管運動に変調を来たし、便通障害を起こす方が増えています(過敏性腸症候群)。一方、高齢の方、特に高齢女性では「胃下垂」と同じように大腸も緩んでだらんとしてしまいますので便秘になりますし(弛緩性便秘)、腹筋や大腸の壁や骨盤の底の筋肉も薄くなってしまうため便を押し出す力が弱まっていまい、便が上手くすっきりと出ない(出口症候群)のような病態もあります。

「便秘」と一口に言ってもその症状や原因は以上のようにその人それぞれです。ですからその方の病態に合った治療をしなければ、治りません。薬局に行って闇雲にわけのわからない下剤をひたすら買い求めたところでしようのないことです。
では、どんな順番で便秘を解消したらよいのでしょうか。

まず、検査を受けられたことがない方は習熟した医師に便通の様子をよくお話された上で大腸検査を行ってもらうことです。それにより、大腸の中に便を詰まらせてしまうような病気がないかどうか、あるいは大腸の長さやたるみ具合などもわかりますので、癌のあるなしだけでなくその人の大腸の様々な情報が得られます。うかがった話と併せて、その方の便通障害の診断がこれでかなり可能になるでしょう。

では、いわゆる「慢性便秘」であったとしたらどうすればよいでしょうか。
まず、便秘の解消にはできるだけ規則正しい生活を送ることが肝要です。十分な睡眠をとり朝食をしっかり摂ること、また起き抜けにコップ1杯の冷たい水や牛乳を飲用すると反射的に大腸の運動が促進されるので便通の一助になります。また腎臓病などで医師から水分の摂取制限を受けている方以外は、食事以外に最低1日1。5㍑の水分を摂るように心がけましょう。さらにウォーキング、ジョッギング、水泳などの運動も便通には一助となるでしょう。ただしこれら日常生活管理のみでは便秘が解消されないことも多いと思います。そこで次の段階として適切な下剤の使用が求められます。

まずご理解頂きたいことは、下剤にもいろいろな種類があり常用可能、あるいは常用しないと効かないものと、常用してはいけないものがあるということです。「下剤は癖になるから使いたくない」というお気持ちは当然ですが、処方薬としての下剤の中には決して癖にならず、毎日ご飯や野菜を摂るのと同じ感覚で利用できるものもたくさんあるのです。

普段から農薬や保存料、着色料を含んだ物を毎日のように口に入れておきながら、「薬」となると急に人工物は良くないという根拠のない観念に囚われて安全な下剤を使わないというのは、どう考えても不条理です。

頻用される下剤の種類と特徴

常用しても癖にならない下剤の代表は「マグネシウム」製剤です。
これは腸管には全く刺激がなく(いくら服用してもお腹が痛くならない)、作用としてはただ便を軟らかくするだけです。マグネシウムは服用した場合そのほとんどが大便とともに排出されてしまい、高度の腎臓機能障害などごく一部の疾患を除けば安全に長期間使用できる下剤であり、服用しながら妊娠・出産・授乳されても全く問題はありません。また小児にも安全に使用することができます。常用しているうち量を増やさないと効かなくなるようなことは絶対にありません。


一方、最も習慣性が強い、すなわちクセになりやすい下剤がアロエ、センナ、ダイオウに代表される生薬・漢方系下剤です。市販薬でよく宣伝されており手軽に入手しやすい、飲みやすいこともあり、これらを常用されている方を非常によくお見受けするのですが、アロエ、センナ、ダイオウに含まれる下剤成分は基本的に同一のものであり、また錠剤でも煎じ薬でもお茶でも作用物質は全く変わりありません。

これらは大腸を強烈に刺激して蠕動運動を起こさせ排便を促すもので、確かに最初のうちはよく効きますが、長期間の連用により容易にしかも確実に常習化をもたらします。

すなわち、だんだん効かなくなってくるために服用量が次第に増加し、大腸粘膜の黒色化を来たし大腸の筋層が薄くなってしまい、遂には全く張りのない紙風船のような真っ黒でペラペラの大腸になってしまいます。それとともに下剤を飲まないとお腹が張って苦しくなるという症状が現れ始めます。

「アロエなど自然界に存在するものは人体に害を及ぼさず常用でき、化学合成した薬物は常用しない方がよい」
などという観念は全くの誤りです。

直腸肛門痛について

直腸肛門部に痛みがあると、多くの方は先述した痔核・痔瘻・裂肛のような「目に見える疾患」を心配されると思います。しかし最近はそれらいわゆる「痔」疾患とは全く異なる原因の直腸肛門疾患が増えています。それは、「消散性直腸肛門痛」あるいは「挙肛筋症候群」と謂われる疾病です。

原因については諸説あり、陰部神経痛など何らかの神経機能障害が推測されていますが、未だにはっきりはしていません。痛み方には個人差がみられ、持続の短い鋭い痛みのこともあれば、痛みと言うよりは不快感ないしは鈍重感あるいは違和感という感覚であることも少なくないです。

比較的共通しているのは、
  1. 痛みの出現するタイミングは排便とは関係がない、
  2. 一日中痛いわけではなく忘れている時もある、
  3. 割と午後、特に夕方から夜、就眠後に痛みやすい、
  4. 疲労や睡眠不足、長時間の座位など心身にストレスがかかった時に起きやすい、
  5. 寒い時に多く入浴後は楽になる、
  6. 痔核切除などの肛門手術を過去に受けたことがある方、
以上のような特徴を有しています。

治療に関してですが、残念ながら「特効薬」というようなものはありません。ただし、まずは便通が楽になるよう整えた上で、その方の状態に応じ神経機能を落ち着かせる類の薬剤を服用することで、大多数の患者さんに症状の改善が得られます。この際、大切なことは結果を性急に求めないことです。

何回か受診され、日常生活の指導や投薬などを行いながら症状の変化を確認し、必要に応じて処方内容などを変更してたとえ少しずつでも症状からの解放を図ってゆくのが結局は最短と思います。

便失禁について

日本人は「羞恥教育」が良くも悪くも行き届いており、特に昨今の高齢化社会にあっては、便漏れで一人悩みを抱えておられる方は潜在的にかなりの数みえるのではないかと思われます。

また、難産のために出産時に肛門括約筋まで裂けてしまい、それが原因で便が漏れやすくなる場合もみられます。特にいわゆる自然分娩にこだわり、会陰切開を拒絶する方でこの危険性は高まります。

便が漏れる、と言うとほとんどの方は肛門の締りがゆるくなったせいと考えがちです。勿論、それも大きな要素には違いないのですが、人間が便を漏らさずにいられる要素は10以上あると言われており、肛門括約筋だけが禁制を維持しているわけではありません。また人間の肛門は長時間にわたり水も漏らさずにいるようにはできていません。ですから、「もう括約筋がゆるいからダメなのだ」と、最初から諦める必要はないということです。

むしろ大切なのは、ちゃんと起立して歩行ができるようにそれなりにお元気でらっしゃるかどうかです。自律生活が可能な方であれば、便の性状を改善する、排便リズムを作ってあげるなどするだけでかなりの症状の改善を見込めます。

「恥ずかしいから」とか、「もう高齢だから」という理由だけでハナから諦めてしまうのはいかにも「もったいない」話です。

IBD(炎症性腸疾患)とおしりについて

特に食生活を中心としたライフスタイルの欧米化により、かつて日本ではあまりみられなかったクローン病(Crohn’s Disease; CD)や潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis; UC)などの炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease; IBD)が著しい増加を見せています。特にCDに伴う肛門病変は非常に多彩であり、難治な場合も少なくありません。

CDにより来される痔瘻は典型的なものはかなり特徴的で普通の痔瘻とは外観的にも様相が異なるため、おしりに精通している専門医が診れば直腸肛門病変だけでCDの疑診をつけることさえできます。

治療は、腸管のCDの治療をまずはしっかりと行います。これにより腸管病変が改善すればそれにつれおしりの症状も良くなるというわけです。もし膿が溜っていれば皮膚を少しだけ切開して膿を出しますし、痔瘻に対しては通常のように手術をしてしまうと傷が治りにくかったり括約筋がひどく損傷したりすますので、「seton法」と言って柔らかい素材のチューブや紐で瘻管に輪をかけておくような処置をします。また最近ではCD痔瘻に対してインフリキシマブとseton法が併用される場合も多いです。

痔瘻は大腸病変を有する例で多く発生し、特に直腸病変がありますと痔瘻は複雑化しやすく、奥深くに進展しますのでこのような例では直腸肛門狭窄が大きな問題となります。それと同時に、放置すると稀ではありますが同部の癌化の可能性があります。

担当医紹介

三枝 直人 先生
(結腸直腸外科非常勤医師)
page-top